じょくそう(床ずれ)予防用品の選定について
じょくそう(床ずれ)
☆ じょくそう(床ずれ)とは
圧迫等によって血行が遮断されることにより、皮膚に栄養、代謝障害が起きます。この状態が長時間あるいは繰り返されることにより寝たきりの方、長期入院患者、術後入院患者の身体の接触面に、ただれが起こったり悪化して皮膚や内部組織が腐った状態になることを床ずれ(じょくそう)と言います。
☆ じょくそう(床ずれ)の分類
第1度(ステージ1)・・・・・発赤、表皮は損なわれていない。
第2度(ステージ2)・・・・・皮が破けて痛みを伴う。懐死物はない。
第3度(ステージ3)・・・・・脂肪まで達するポケット形成。懐死組織。
第4度(ステージ4)・・・・・ポケットが皮下組織を越え、筋肉や骨まで進行。
※じょくそう(床ずれ)は、第4度 → 第3度 → 第2度 → 第1度と治らない。 → 肉芽組織が形成されるだけ。
※治る過程の色
黒 黄 赤 白
☆ じょくそう(床ずれ)の原因
@ 圧迫(体圧分散不良による血行障害)
A 湿潤(発汗・失禁)
B 摩擦・ズレ
C 内的要因(栄養不良・加齢・むくみ・知覚障害・体動能力)
以上が原因と言われていますが、上記の様々な要因が絡み合って起こる複合要因であるとも言われています。また、体表面温度32℃〜36℃・体表面湿度60%〜100%という床ずれの高発生条件をつくりやすい日本固有の風土(温暖多湿)も関連していると言えます。
一般的なじょくそう(床ずれ)ケア
☆ 禁止行為
@ マ ッ サ ー ジ 皮下組織の炎症や損傷の原因
A 乾 燥 新しい肉芽の形成を阻害
B安易な円座の使用 中心部の皮膚が周囲に引っ張られ血行が悪化
C30度以上のギャッジアップ ずれが発生し毛細血管が切れる。リネンにしわ。
☆ ケアの方法
@ 除 圧
A 清 潔 治療・洗浄・清拭 懐死組織を除去、感染防止
B 栄養改善 高栄養食・補助食品の摂取
身体の内側から治癒できる力をつける。
C 湿 潤 ドレッシング材等の保護材を使用
肉芽組織の再生力を高め、外からの細菌感染を防止
※除圧の原理=圧力を集中させない。
@ 同じ体位で寝かせない
→ 圧迫が身体の同じ箇所に継続して加わり続けるのを防ぐ。
・体位変換(30度の半側臥位、2時間置き)
・じょくそう予防用具の使用(圧力切り替え機能のあるもの)
A なるべく広く受ける
→ 受圧面積を広げ、体圧を分散させる。
・パッド等の補助用具の使用
・じょくそう予防用具の使用(柔らかく身体を支える事ができるもの)
※じょくそうのリスク=圧力の強さ×圧迫の時間
※ 体圧の理想値 = 32mmHg以下の数値が望ましい
↓ ↓
動脈性毛細血管内圧
じょくそう予防用具
☆ じょくそう予防用具の分類
長 所 短 所
@
ウレタンマット 安 価 安定性 除圧力に限界(圧切替不可能)
水に弱い 耐久性(へたり)
A
エアーマット 除圧力高く切替可能 高 価 不安定
セル交換可能
B
その他マット 安 価 部分的・短期的な効果しかない
☆ エアーマットについて
エアーマットは、マット(パッド)の中にポンプで空気を送り込み、交互に膨縮することにより、寝ているときにパッドに触れている身体の部分圧力を分散させることを目的としています。形状から分類すると、細長い筒状のセルが並んだセル型と、亀の甲の形をした一体成形型があります。機能的に分類すると、体圧分散タイプ・エアー噴出タイプがあります。
長 所 短 所
一体成形型 安 価 安 定 除圧力低い(底付きの可能性)
(体圧分散型) 修理不能
セ ル 型 除圧力高く切替可能 高 価 不安定
(体圧分散型) セル交換可能
※エア噴出型はなるべく避けたい
・低圧保持できず、体圧分散という本来の目的を成さない。
・パンクの原因
・無意味 → 創部は乾かさない方が良い。エアーが創部に届かない。
☆
介護保険制度化で望まれるエアーマットとは
@
相反するテーマを克服できるエアマット
使いやすさ(動きやすさ・介護し易さ) ⇔ 除圧能力の高さ
A
使用環境(療養生活)の変化に対応できるエアーマット
起座によるベッド上での療養生活の時間⇔ギャッジアップ対応のエアーマット
B
耐久性の高いエアーマット
レンタルでの利用 ⇔ 繰り返し使用しても性能が変わらないエアーマット
☆ エアーマットのチェックポイント
@
エアセル独立型(筒状分離型)であること
エアセル独立型と一体成形型では、エアセル独立型の方が床ずれ発生率が半分に抑えられることが報告されています。エアセルは1本づつ取り外し可能なものを選びます。(万一破損しても簡単に交換できるものが良い。)
A
エアセルは20本以上(交互膨縮タイプ)
幅の狭いエアセルが多いほど受圧面積が広く除圧効果がある。エアセル数が多いと船酔い現象はない。また、交互膨縮タイプにより受圧分散がより図れる。
B
厚みがあるもの(且つギャッジアップ対応)
寝たときに身体が底付きしないよう厚み(高さ)のあるものが良い。尚且つギャッジアップに対応できるものが求められる。
C
エアが噴出しないこと
エアを噴出させるためにはマットの内圧を高圧にしなければならないため低圧保持が出来ないこと、創部を乾燥させる、MRSAなどの菌を飛散させる、冬は寒く血行不良を起こしたり風邪をひいたりするなどの理由から問題が多い。
D
低圧で保持できる
床ずれ発生の接触圧の目安として32mmHg(毛細血管圧)以下にマットの内圧を保持できるかが大きなポイントになる。(マイコン制御)
E
耐久性・環境性のある素材
ウレタンフィルム・高重合ポリマーを使っているものが耐久性がある。塩化ビニルを使ったものは耐久性に乏しく破損しやすい。環境面からも問題がある。
F
エアポンプ
モーター音が静かで耐久性があるもの。目詰まりして出力の低下するものには注意。
☆ エアーマットの症状別目安
寝たきりの方またはベッドから離床できない方、すでにじょくそうの発生がみられる方は、セル型エアーマットの導入が望ましい。ベッドから離床できる方の予防用には、低反発ウレタンフォーム素材のポーリア・アイリス・ソフトナース・パラフロートマットレス等の導入が考えられます。重度の方や重症で動かせない方へは、治療用のエアマスタービッグセル・オートエクセル等があります。但し、医師との相談の上導入すること。
☆ 体位変換について
身体の向きや姿勢を変えることを体位変換といい、床ずれ予防のためには一般的に2時間おきに体位変換を行うのが良いとされています。床ずれ発生危険率が高い患者の場合はさらに短時間の体位変換が必要となります。
90度横向けに寝た状態にすると、大転子には人体で一番高い圧力が加わります。特定部位への圧迫は即、床ずれにつながるので避けましょう。30度横向けに寝た状態が骨突起物への圧迫が少ないため、身体の隙間に保持用具を入れ、30度以下にするのが望ましいです。
☆ ベッドのギャッジアップは30度まで
ベッドを30度以上ギャッジアップさせると、お尻で体重を支えることになり寝ている状態よりもお尻に大きな圧力がかかります。また、身体が足のほうにずり落ちるために摩擦やズレを生じてしまい床ずれ発生の危険性が高くなります。
☆ 円座について
円座は床ずれ予防用品として多用されてきましたが、ここ数年で変化が起こってきています。円座は中心部がくりぬかれているため、円座周囲の狭い面積で支えなければならず局所的に圧力がかかる。中心部の皮膚が周囲に引っ張られてしまうのでズレと圧迫が生じるだけではなく、血液の流れも阻害してしまう。床ずれはある程度進行すると創部ではなく周囲に痛みを感じるので、その痛みの部分を中心に当て創部を周囲に当ててしまう。等、床ずれ予防用具としては不都合な報告がなされており、十分な考慮と観察が必要で安易な使用は避けた方が良いでしょう。
じょくそう(床ずれ)予防用品
セイフティフィールズ推奨商品の紹介
エアーマット
◎エアーマスター・トライセル
@
底つきしにくい → ギャッジアップ対応 →自立支援
・アクティブセル ・背上げ機能
A
除圧能力が高い → 重度じょくそう保有者対応
・アクティブセル ・トリプルシステム ・マイコン制御
B
安定性あり動きやすい・寝心地が良い → 介護者支援、安眠、じょくそう予防
・アクティブセル ・トリプルシステム
C
ウレタンフィルム素材使用 → 高耐久性、環境への配慮
・アクティブセル ・3年保証
D
制菌・抗菌加工 → 感染防止
・上面カバー ・ベースシート ・ポンプ ・送風チューブ
○エアドクター
@
底つきしにくい → ギャッジアップ対応は不可
A
除圧能力が高い → その低圧保持力は過去のデータから実証済み
B
高重合ポリマー素材使用 → 耐久性、環境への配慮
○マイエアー7
@底つきしにくい → ギャッジアップ対応は不可
A除圧能力が高い → その低圧保持力は過去のデータから実証済み
B緊急時CPRタグ付き → 心肺蘇生時に空気を即座に抜く事ができる
ウレタンマット
◎ソフトナース
@
体圧分散性 → 低反発特殊ウレタン
A
ムレ・衛生問題 → 優れた通気性・洗濯も可
B
快適性 → 寝心地の良さ
◎ポーリア
@ 体圧分散性 → 特殊ウレタン2層構造
A ズレ・摩擦 → 表面全体に切り込みを入れるアイリスカットが最小限に抑える
B ムレ・衛生問題 → 優れた通気性・洗濯も可
C
快適性 → 寝心地の良さ
○アイリス
@
体圧分散性 → 特殊ウレタン2層構造
A
ズレ・摩擦 → 表面全体に切り込みを入れるアイリスカットが最小限に抑える
B
快適性 → 寝心地の良さ・通気性も抜群
○パラフロートマットレス
@ 体圧分散性 → 低反発ウレタン+高弾力性ウレタン
A ムレ・衛生問題 → 優れた通気性・クリーニング可なトップクッション、カバー
B 快適性 → 使い慣れた布団感覚で抜群の寝心地
○ロンボ・ケア・プリベント
寝返りの打てない重症の方用ウレタンマット。エアーマットにはない抜群の通気性で、ムレ問題を解消。ウレタンマットとしては驚くほどの低圧保持力を実現。失禁対応タイプも用意している。
ムートン
◎ナーシングムートン
自然毛の持つ毛足のクリンプ(ねじれ)による起毛効果が体圧を分散し摩擦を軽減します。自然毛の持つ空調効果で肌表面の乾燥が期待されます。エアーマットとの併用が一般的。
チェックポイントをすべてクリア
@ 毛が密生していること。
A 毛足の長さは25〜30o
B サイズが大きいもの
C 洗濯可能なもの
D 抗菌加工・防ダニ加工
E 有害物質・環境問題をクリアしているか。世界一厳しい基準のドイツのエコマーク
を取得しているか。(環境の問題もあるが、毛皮製品についてはなめしと着色の段階で化学薬品を使用する問題があるため)
体位変換・体圧保持用具
◎ロンボポジショニングピロー
従来から使用されているビーズパッド等が抱えていた「洗濯」「蒸れ」「へたり」という問題を解消した優れた床ずれ予防用具・体位保持用具です。95℃までの温水で洗濯可。台形状に小さくカットされた通気性の良いポリウレタン(オープンセル構造)小片により、優れた体圧分散効果を実現します。
◎超通気サーティパット
体位変換のポイントにあったように、骨突起部への圧迫を避けるには、30度の半側臥位を保つのがベストとされています。その30度ポジションを得ることのできるウレタンフォームパットです。超がつくほど通気性抜群で、体圧分散性にも優れています。
簡易体圧測定器
◎プレッシャースキャニングエイドセロ
圧迫されている部位の体圧を、理想の体圧値である32mmHg以下に保つための簡易体圧測定器です。持ち運びにも便利で、約10秒で正確な数値が測れます。じょくそう(床ずれ)の危険性を素早く確認できます。